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執筆者の写真松本浩彦

胃アニサキス症に応急処置はありません

5月11日 デイリースポーツ掲載コラム 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 胃アニサキス症が話題になっていますが、私自身イヤと言うほどの患者さんを診て、内視鏡で取り除いて治療した経験があります。だいたい「長さ2センチのそうめん」くらいの大きさです。

お腹が痛くなるといえば、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性虫垂炎、胆嚢結石に尿管結石など、さまざまな原因がありますが、回虫の一種であるアニサキスは胃の粘膜に噛み付き、中にもぐり込もうとしますので、原因となる生の海産物を食べて5時間以内に「みぞおち」が焼けるような胃痛が起こります。アニサキス以外の腹痛は、楽になったりまた差し込んだりと、痛みに波がありますが、アニサキスはずっと痛い。これは大きな特徴です。 私は京都の大学で医学を学びましたが、寄生虫学の実習で、京都中の名だたる名店の「きずし」いわゆる「シメ鯖」を集めてきて、身をほぐしてアニサキスを探すという授業がありました。その結果、半数以上の「きずし」にアニサキスが見つかりました。予防しようと思ってもムリだと教わったことを40年近く経っても鮮明に覚えています。 アレルギーの原因となることもあるのがイヤらしいところで、じんま疹のような湿疹や皮膚のかゆみがでることもあります。サバのアレルギーだと思っていたら原因はアニサキスだったという症例もたくさんあります。これまた、医者にとっては迷惑な話です。 アニサキスは人の身体の中で長くは生きられません。一週間もすれば自然に死滅しますがその間、七転八倒しながら胃の痛みに耐える勇気のある人はいないでしょう。いくら新鮮だといっても、海産物を食べて3~4時間でみぞおちに急な激痛を感じたら、即刻、胃カメラの設備のある医療機関を受診して下さい。応急処置、素人療法は無効です。 唯一の予防法は「よく噛む」ことです。噛んで噛んで、アニサキスを噛み殺してすり潰すんです。わが家では、家族で食事に行って「シメ鯖」が出てきたら、唾液状になるまで良く噛んで食べろと、幼稚園の頃から子供たちを躾けています。そうそう、鯖だけではありません。ブリやイカにもいますから気をつけて下さいね。

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