今、中国で新型鳥インフルエンザ(H7N9)が流行し、感染拡大の兆しを見せています。マスコミ報道だけをみていますと、このインフルエンザは致死率が極めて高いようにお思いでしょうが、私の見解は少し違います。
まず、WHOから、この新型インフルエンザに対してリレンザもタミフルも有効である、と言う報告が出されました。と言うことは、もし感染しても、すぐにお近くの診療所に駆け込めば、治ると言うことです。リレンザやタミフルが効くと言うことは、点滴のラピアクタや、一回吸入のイナビルもまず有効でしょう。
「いつでも、だれでもどこでも治療が受けられる」という、まさに国民皆保険制度の恩恵です。
さて、マスコミ報道を見ていますと中国で多くの死者が出ていますが、これには中国の医療事情が大きく関係していると思います。中国で感染している人は家禽類の販売業者や、もしくは衛生環境の悪い片田舎で生活している人が多く、また中国には健康保険制度がありませんので、病院にかかりたくてもお金がなくて行けない、という人が大勢おられます。
また、日本のようにどこの医療機関に行っても、いつでも特効薬が常備されているという状況ではありません。ですので、中国で亡くなられた方には大変お気の毒ですが、もしこれが日本だったら、亡くなるほど重症化する前に、近隣の医療機関で、すぐに治療を受けることができたと思います。
更に、これは私がいつも言っていることなのですが、新種のウイルスが流行した場合、まずそのウイルスの立場に立って考えることです。「このウイルスは人を殺したいのか?」それとも「世界中に拡散したいのか?」
エボラ出血熱やマールブルグ熱、数年前に話題になったSARSのような、致死率90%と言われるキラー・ウイルスは、感染した人は直後に発症してすぐに亡くなりますので、ごく限定された地域の風土病にしかなり得ません。だから広がらないのです。
一方、2009年に流行った豚インフルエンザウイルス(H1N1-2009型)は、熱もそれほど高く出ず、症状も比較的軽く、感染しても潜伏期が長かったため、感染者が世界中を飛び回り、またたく間に世界中に広まり、今や、いちばん感染者が多いインフルエンザになりました。ウイルスの思惑どおりの結果になったのです。
さて、既存の特効薬が有効ということは、私は今回のこのウイルス、後者だとみています。だとしたら、日本にやってくるまでにそう時間はかからないでしょうし、それなら自分もさっさと感染してしまいたい、とさえ私は思っています。
それで免疫ができるのですから、怖がらずに患者さんを治療できます。
マスコミではどんどん発表される死亡者数が増えていますが、中国と日本の医療事情の違いも考えて、たとえ日本に飛び火してきたとしても、どうか恐れたり、パニックになったりしないで下さい。日本の医療事情であれば大丈夫ですから。