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執筆者の写真松本浩彦

5月18日 デイリースポーツ掲載コラム

歌舞伎役者の中村獅童さんに非常に早期の肺がんが見つかった、という報道がありました。肺がんは、大きく分けて「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」「小細胞がん」の4種類に大別されます。このうち腺がんは全体の6割で、日本では最も発生頻度の高い肺がんです。男性で約4割、女性では約7割が腺がんと言われていますが、腺がんは喫煙との因果関係が低いこと、男性の場合は喫煙に関係する扁平上皮がんや小細胞がんが多いこと、腺がんは非喫煙者に多く発症するという特徴があることなどから、発生頻度は喫煙者の少ない女性の方が高くなります。 腺がんは肺の末梢(気管支の細い部分)に発症するケースがほとんどで、末梢型もしくは肺野型とよばれます。中心の太い気管支(肺門部)に発生することは稀で、通常のX線検査で発見しやすい肺がんです。その分、初期段階ではなかなか自覚症状がなく、健康診断で偶然見つかることはよくあります。 奇跡的な早期発見という話ですので、獅童さんの肺がんの直径は5ミリから10ミリの間で、場所にもよりますが、おそらくは胸腔鏡というカメラを肋骨の隙間から入れて、細長いハサミやピンセット、自動縫合器を使って、がんとその周囲をだいたい野球ボールくらいの塊で切り取る、そんな感じの手術になると推測します。 肺というのはごく小さな風船の集まりのような臓器ですので、一部を切り取ってもすぐに残りの部分が膨らんで、空洞を埋めてくれます。隙間が残ることはありませんので切除範囲が小さければ回復も非常に早く、長くて3週間もあれば通常の生活に復帰できると思います。 さて獅童さんの場合、多くの近いご親戚ががんだったという事で、遺伝的関係が取りざたされていますが、ここで皆さんに知って頂きたいのは「がんは遺伝病ではない」という事です。米国の研究では、がんの原因で遺伝的要因は5%、残り95%は、例えば喫煙とか肥満とか、生活習慣に起因すると判明しています。がんは細胞の突然変異ですから、がんにかかるのは「偶然」というのが実は正解なのです。



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