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執筆者の写真松本浩彦

ヘルペスについて

ヘルペスは非常に厄介な病気です。実は私もヘルペス持ちでして、月に一回は唇に直径5ミリくらいのヘルペスができます。

ちょっと夜なべ仕事をしたり、仕事終わりに「あぁ〜、今日は疲れたぁ〜」などと思ったら、翌日には見事にヘルペスの小さな芽ができます。


もう何十年来のお友達ですので、出そうなときは唇のどこが一点がむずがゆくなり、アッ、来るな。というのが分かりますので、いつもカバンに入れて持ち歩いている飲み薬を飲み、塗り薬を一時間に一回くらいすり込みます。

おかげで水泡になる前に、まぁそれでも3〜4日はかかりますが、大事に至らずに済みます。

さてそんな訳で、私は世界中の文献を読みあさり、インターネットでも常に最新のヘルペス治療法を検索しています。

なにせ自分の持病ですから、そらぁ必死にもなります。


ヘルペスの何が厄介かと言いますと、もちろんお腹や背中にズラーッと帯状疱疹が並んで出ますと、これがまた痛い。

入院して点滴という人も大勢います。

けど、これはヘルペスウイルスによる一時的な感染ですので、平たく言えば皮膚のその辺りが風邪をひいたようなもので、一週間もすれば水泡発疹はおさまります。

問題はその後です。

痕が残ったり、赤黒いのは、一年以内にまず治ります。

ところが、帯状疱疹後神経痛というのがありまして、これは辛い。

ヘルペスというのは神経に沿って出るのですが、例えば顔の顔面神経や三叉神経領域に沿って帯状疱疹が出ると、かなりの高確率で後遺症の神経痛が出現します。

さて、皆さん子供の頃に水ぼうそうにかかりますよね?

最近は水痘ワクチンがあるので、実際に罹患する方は少なくなってますが、実はヘルペスウイルスは水ぼうそうのウイルスと同じものなのです。

子供の頃に水ぼうそうに罹ると、治ってもウイルスは一生その人の身体の中に棲み付いてしまうのです。まぁ共同生活ですね。

で、その宿主であるヒトが元気なときはウイルスも良い子ちゃんで、背骨の中を通っている脊髄の中でおとなしく潜んでいるのですが、宿主の体力が落ちて来ると、おっ、コイツ弱ってきよった、とばかりに悪さをし始めるんです。

これを「日和見感染(ひよりみかんせん)」と言いまして、普段は常在しててもおとなしくしているウイルスや雑菌が、宿主の免疫力の低下で繁殖し始めることは珍しくありません。

ヘルペスの場合、脊髄に巣食っていて、脊髄から身体を後ろから回り込むように走行している神経に沿ってウジャウジャと出てくるのです。

ですので、顔面神経や三叉神経、肋間神経痛なんていう言葉を聴かれたことあると思いますが、あれなんか典型的な帯状疱疹後神経痛なのです。


私の患者さんで、膝に広範囲に帯状疱疹が出て、来院された時にはもう相当に広がってて、大慌てで治療したのですが、もちろんヘルペスの水泡状の発疹は一週間ほどで引きましたが、その後神経痛で歩けなくなって、一年ほど寝たきりになってしまった高齢男性がいます。

ヘルペスは、神経痛や麻痺に気をつけてください。

ちょっとでもおかしいと思ったら、すぐに受診しましょう。

ヘルペスの話になると、なにせ私も持病ですから、話し出すと止まらなくなってしまいそうなので、今日はこの辺で。

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